2021/03/13

general violence

「暴力大将」
クローズ、WORSTなどの高橋ヒロシの作品が好きなんだけど、作者本人も広言している通り随所にどおくまんの影響が見られる。 相当好きならしい。どおくまん作品は男子ならヤラレタ方も多いんじゃないでしょうか、泥臭く下品でリアルで筆のタッチも荒く決して上手い絵ではないがつきぬけた魅力を放っている。

なかでも「暴力大将」は不良漫画史上ベストと言ってもいいくらい面白い。設定は昭和15年(1940)~昭和30年(1955)で大きく分けて次の4編からなる。
・小中学校編(尋常小学校、高山中学校)
・河内矯正院編
・戦争編(バターン半島沖コレヒドール島、死の島ガダルカナル)
・戦後闇市編

暴力大将で描かれる不良少年の生きた時代は激動の時代、 死人部隊となって囮にさせられ大東亜戦線におくりこまれる。敵は重武装したアメリカ兵であり軍部である。 あの時代を扱った作品自体が非常に少ないので歴史大河作品(歴史の闇)としても楽しめる。 河内矯正院から話が一気に盛り上がるが、暴力度が凄まじく、バトルというか、ナイフ、丸太、石、斧、ライフル、ピストル、弓矢、槍、ダイナマイトを使った殺し合い。 強烈な戦闘描写は脳裏に焼き付いて離れないほど。

脇役にクセがあってそれぞれのキャラが作りこまれているのがリアル、 イケメンも草食男も萌えキャラも女もいない、戦闘時にいちいち苦悩するナイーブなアムロくんもシンジくんも出てこない。 ごっついいかつい男、漢、侠だけの世界


力動 剛(りきどう ごう)
河内の暴力大将の異名を持つ主人公、大の喧嘩好きで、喧嘩で中学校を壊して矯正院に入所させられる。 町の易者曰く「万に一つの天下取りの相」を持つ、義理人情に厚く人の上に立つ器の持ち主、河内矯正院、大東亜戦争を通して男としても成長していく。ジープを持ち上げ、戦闘機に投げつけるほどの怪力、手榴弾投げ200M、WORSTの月島花のモデルらしい。

武田実三 (たけだ じつぞう)
力道剛が入れられた河内矯正院第四組第31号室の室長
殴られても何度でも立ち上がるタフな熱血漢、力動にボコられても向かっていったことから「根性ある」と評価される。頬まで生えたもみあげが特徴的、こんな野暮ったい顔した中学生は見たことないんだけど、、、

黒木栄二郎(くろき えいじろう)
額に十字傷の白髪の男、行方不明となった兄(栄一郎)を探しに矯正院に潜入、 力動にその腕を買われて片腕的存在に。 拳法の達人で身のこなしが軽く参謀としても有能、頭が良く参謀として戦術面で力動をサポートする。敵を偵察しにいったと思ったら次の瞬間は力動の傍らにいるんだから力動組になくてはならない存在。 時折見せる男気も素敵なのでファンも多いでしょう。 本作品には幾多の戦闘シーンがあるが勝敗は戦術によって決まるといっても過言ではない事を教えてくれる。 バトル漫画だとガチで真正面からぶつかっていくパターンが多い中、敵の戦力を偵察、諜報、分析して、勝つために戦術を駆使していくリアルさも本作品の魅力

増井弁達(ますい べんたつ)
第四棟組頭
河内矯正院には第一棟から弟六棟まで6棟の収容施設があり、各棟には30人収容の大部屋が8~10室ある、力動の入所した31号室から38号室までは第四棟に属しており、その第四棟全体をしきってるのが増井、 四角い顔の額に丸い瘤、一見してリアルにいそうでこちらが身の危険を感じるほどに増井はインパクトある。 増井と力動とのバトルは作中2度あるが一コマ一コマが壮絶で手に汗握る名シーン、キレると全身の血管が浮き上がりピクピク痙攣する。「ちわーっ」の気合も特徴的、手榴弾投げ99M

三好空海(みよし くうかい)
第二棟組頭
第一棟~第六棟からなる河内矯正院ではもっとも実力のある勢力が藤助や村岡(11号室長)を擁し三好率いる第二棟(11号室から20号室)、 首から数珠をかけた僧侶のようないで立ちの巨漢、数珠は相手を締めあげる際に武器として用い丸太をもへし折る。増井よりデカく作中では根室に次ぎガタいが良い。 頭の中心部を剃った聖職者にも見えるヘアスタイルも類を見ない怪僧、 戦争編に突入した際の軍服姿の雄姿は恰好良すぎて好き。手榴弾投げは調子悪くて98M、 モデルは真田十勇士の三好清海入道、高橋ヒロシ作品にも化け物のような出で立ちで強くて魅力的な男が数多く登場するがその影響が見て取れる。

伊賀藤助 (いが とうすけ)
三好がしきる第二棟の幹部(おそらく室長)、 忍者のように身の軽い出っ歯で醜悪な小男、こういうおっさん顔は昭和の昔にはよくいたような、、 釘を手裏剣のように使う。 風呂場で入浴中の力動を襲う初登場シーンは衝撃的、人はリラックスしてる時が最も無防備で弱い、そこを容赦なく狙うという徹底したリアリズムにトラウマ必至、藤助の力動強襲を合図にして抗争がスタート、弟四棟と第二棟の抗争は熾烈を極める作中随一の面白さで、力動VS三好、黒木VS藤助の好カードが揃う、 黒木との忍者バトルは後のナルトVSサスケを彷彿とさせる(させない)、力動組に入ってからは主に偵察要員として活躍、名前の由来は大正時代の活動写真映画「忍術藤助」から(?)

根室武蔵 (ねむろ たけぞう)
第六棟組頭であり矯正院の総部屋長として君臨して矯正院全体を支配している。 恐ろしいまでに醜悪なルックス、おそらく少年漫画史上もっとも醜い化け物キャラの一人だと思う。悪魔のような偶像崇拝者であり、 登場時は悪魔の仮面、全面戦争時は牛の仮面を被りおどろおどろしい雰囲気を持つ、握力で人の頭を頭蓋骨ごと握りつぶすほどのパワー(バキより強くないか?)、また分が悪くなると〇〇ジと合体するという手段を選ばない卑劣な奥の手を使う。 鬼滅の伊之助のモデルなのかは不明

黒木栄一郎(くろき えいいちろう)
行方不明となっていた黒木栄二郎の兄、 力動が矯正院に入所する3年前に河内矯正院に入所している、 バトルシーンは回想シーンのみで、当時、根室に次ぐ実力者だった大山を倒すも根室と壮絶な死闘の末に敗れ地下牢に幽閉されている。 弟の栄二郎と再会を果たすもおそらく認識できていないほど廃人となっている。 尚、黒木兄はどおくまん漫画には必ず登場する「花の応援団」の青田、「花沢高校」の獣田など別次元に強い超人キャラに相当、 この規格外に強いキャラの存在という設定はクローズのリンダマン、WORSTの花木九里虎の位置にも影響を見て取れるが、 本作品では活躍する場面はなく根室により地下に閉じ込めらている。廃人同様となった姿はどおくまんファンからすれば矯正院という闇の凄まじさを強烈に印象づける。 河内矯正院編「黒木栄一郎外伝」があれば読みたいんだけど。

矯正院親衛隊

地獄院と呼ばれる河内矯正院を取り仕切る院長とその親衛隊、 収容生に対する刑罰は残酷をきわめ、 凶悪な収容性からも恐れられている。 中央の小男が院長の薬師寺、自分とそっくりの猿を飼っている。 秋山(右端)は根室と対峙し壮絶な最期を遂げる。

この他にもモヒカンで顔面傷だらけの第一棟組頭・杉山竜三、斧を振り回す第三棟組頭・友田、ヌンチャクを振り回す第五棟組頭・荒木田独歩、戦争編に入ってからは第2の死人部隊として関東天海組の天海竜馬とその子分、等々多くの侠(おとこ)たちが登場して熱いバトルを繰り広げる。




君を君を閉じこめる奴の気が知れないぜ
君を君を閉じこめる奴は君に気づかない
火の中を駆ける君こそステキさ
嵐に花を咲かす君がイイ!イイ!イイ!イイ!

電光石火に銀の靴
これが君へのプレゼント
電光石火に銀の靴
これが君へのプレゼント

サイクルの耳飾りと
シルバーのサングラスと
ピンクのシャドウと
ブルーのドレスが君らしい

君を君を閉じこめる奴の気が知れないぜ
君を君を閉じこめる奴は君に気づかない
イナズマにキスをする君こそステキさ
シャウトの夜をドライブする君がイイ!イイ!イイ!イイ!

電光石火に銀の靴
これが君へのプレゼント
電光石火に銀の靴
これが君へのプレゼント




暴力大将 / どおくまん / 1975~1985 / 月刊少年チャンピオン
電光石火に銀の靴 / 泉谷しげる / 1977

0 件のコメント: