2011/04/24

every night you have a headache

「The World According to Garp」 'ガープの世界'私評


無邪気な赤ん坊が上下する映像のバックに「64才になってもメシを食わしてくれるかい?」と歌われる曲を使用することによって生み出される効果は依存的で介護を強要してるようで、この赤ん坊が64才になったら親は90近いだろうし、たとえば親をミイラにしたまま放置し親の年金で生活している昨今の日本の社会問題を想起させてしまう、このオープニングを見ただけで内容は皮肉に溢れていることがわかる。奥に毒を秘めた強烈なオープニング。 ジョン・アーヴィングの小説は読んだことはないが映画「ガープの世界」(1982公開)はとても好きな作品だ。 キチガイたちの滑稽でそして残酷な姿をコミカルに描いた物語、これは病んだアメリカの姿であり、現代の日本にも通じる郊外都市の日常生活の中でゆるやかに狂っていった人々の姿である。 ガープによると、この世界の住人は全員が病人に映ったにちがいない。そしてそれは家族を愛するガープにとっては危険きわまりない世界だった。 登場人物の左傾的なキチガイぶりが面白い、時にグロい、時に見るに耐えないほどリアルで、キャスティングは天才的としかいいようのないほどハマっていて痛烈な風刺に満ちた作品を見事に演じきっている。

Jenny Fields

ジェニー・フィールズ・・・淀川長治氏曰く「結婚を嫌い子供のみを欲しがった女」、看護婦であり絶命寸前の負傷兵である三等曹長のガープと性行為、つまり「死にゆく男にまたがって身篭る」これが全ての始まり。生まれた子供にT.S.ガープ(Technical Sergeant Garp)という奇異な名前をつけるガープの母親、欲情を理解できないか悪だと決め付けてる節があり多分にアタマ病んでる。 自らの自伝「Sexual Suspect」(性の容疑者)を書き上げ、これが物議を醸し一躍有名作家となりフェミニスト達の熱烈な支持を集めるが公演中に射殺される。
T.S.Garp

ガープ・・・私生児という境遇、凶暴犬やキチガイ女集団、暴走ドライバーなどガープの日常にはあらゆる不可解な敵が潜む、そんなのと対峙しながら成長していく。
Helen Holm

ヘレン・・・ガープの妻、レスリング部のコーチの娘、読書好き
Cushie

クッシー・・・ガープの隣の家に住んでる幼馴染でガールフレンド、おそらくプッシー(Pussie、猫ちゃん、女性のアソコ)の意味、英語圏でのネイティブの感覚はちょっとわからないけど、この映画は登場人物の名前が面白い。
Stew Percy

クッシーのお父さん・・・自分の飼い犬が隣の家の子供を襲い怪我をさせてしまったにもかかわらず「味がよかったんだ」と笑う、話を聞いて怒鳴り込んできたジェニーに対し謝罪もせず平然と「犬が怒ったんだよ」と言ってのける動物愛護カルト体質の男、殺処分しろといきり立つジェニーがまともに見える。後年ガープが犬に復讐を遂げたときは逆に怒鳴り込んでくる。
Bonkers


ボンカーズ・・・クッシーの家で飼ってる凶暴犬、幼いガープを襲って耳を噛んで怪我をさせる。後に成長したガープに耳を噛み千切られる。
(※bonkers・・・クソ犬の意)
Roberta Muldoon

ロバータ・・・元プロフットボール選手で女性に性転換した巨躯のオカマ、ホルモンバランスが乱れて時々泣く、ガープの友人であり、良き理解者、ジェニーを慕いガープ一家のことが好きで何かと家族の助けとなる、ジェニーハウスにいかつい男が彼女を連れ戻そうと訪れたとき、いきなりタックルかましたり、一途な行動が過剰防衛になる様も可笑しい。ガープがジェームシャンに囲まれ逃げ出そうとする際、盾となり、飛び掛かってくるキチガイババァをぶん殴るシーンは圧巻(爆笑した)
Speeding Plumber

配管工・・・閑静な住宅街を社用車で爆走しまくる配管修理工、いくら注意しても暴走を止めないためキレたガープに鉄パイプで車をボコボコにされるが、それでも暴走をやめないイカれた男
Sniper

狙撃手・・・狙撃手は物語の中盤と終盤で2度登場する。いずれもフェミニストたちの集会の進行中に現れ、アホどもを轟音とともに暴力でパニックに陥れる。 この作品は要所でこういう「いきなりな展開」があるから面白い。ww
Ellen James

エレン・ジェームズ・・・11才の時に強姦され口封じのために舌を切断されるという痛ましい過去を持つ、自身の事件を元に運動が起きている事に責任を感じている常識人、その素顔を公には明かしていないが「Ellen(エレンジェームシャンを批判する内容の本)」を出版したガープに感銘し自分がエレン本人であることを打ち明ける。
EllenJamesians

エレンジェームシャン・・・エレンジェームズ事件をきっかけにして結成された、入会者は抗議の意志を示すためエレンを真似て自ら舌を根本から切断する、そのため喋れず、メモで会話を行うキチガイたち、全ての男を敵視し、触られると癲癇(てんかん)のような発作を起こす重症フェミニスト集団、大半はジェニーの家に居候している。エレン本人から馬鹿げた活動は止めるように嘆願されるも、活動するのは自由と主張し止めようとしないレズ女たち

Pooh

プー・・・クッシーの妹、ガープとクッシーがお医者さんごっごして遊んでいるのをいつも木陰から覗いている、凶暴犬を襲わせてほくそ笑んだり、ガープとヘレンの不和を画策したり、ストーカー気質で何考えてるんだかわからない、うんこのようなおさげをした女、キチガイ女の例にもれず、エレンジェームシャンに入信し舌を切り落とす。 全編を通して(無関係なのに)唐突にストーリーに絡んでくるが台詞は「あ゙~~っ、あ゙~~っ」のみ、他は一切喋らない不気味で不吉で最終的には人殺しまでしてしまうドキチガイ、あらゆる映画の中でも気持ち悪さの極北を体現した存在 (※poo・・・うんこの意、プッシー(まんこ)の妹がプー(うんこ)という設定になってます)

現実でもこの手の訳のわからない不気味な女が多いと感じる昨今、職場で、電車の中で、街で、ネットで、気付くと
プーがこっちを見てる


愚か者達が繰り広げる悲喜劇、馬鹿が叫ぶ自由が幸せな日常を破壊する。キチガイやうんこの所業に翻弄され巻き込まれて、誰もが一人残らず傷つき、ガープの家庭は壊れていく。エンディングはオープニングと同じ映像を使いながら流れる曲はオーソドックスなラブバラード、これからたとえ100万の夢を見ても、その夢はかなわない。僕にあるのは愛する君だけほかには誰もいない、
「there will never be another you /Nat King Cole」
yes I may dream a million dreams But how can they come true if there will never ever be another you

0 件のコメント: